スピード不足はスタートの早さで逆転

たとえば100m競争だと、スタートが一緒なので、足の速い子が勝つのが当たり前です。

ところがサッカーの場合はスタートを、競う相手に合わせる必要はないです。 たとえば相手がボールウォッチャーになって思考を止めている間に、しっかり周りを見ることでいち早くチャンスを見つけて、スタートを切ることもできます。

サッカーでは足が速い者が、常にチャンス(又はピンチ)のその場に、一番最初に到着するわけではないです。 足は遅くても、スタート(判断)が早いと、自分より足の速い子を簡単に出し抜くこともできます。



意外と多いボールウォッチャー

ボール又は、ボール周りのプレーに目が奪われて、ピッチにいながら見ているだけの観客みたいになっている瞬間は、上手い選手の場合でも意外に多いです。

身体能力がある選手だと、判断が多少遅れても、持ち前のスピードやパワーで打開できる場面も多く、判断の遅れが表面化しにくいです。でも、意外と判断の遅れやミスはあるものです。(カバーできちゃう分、判断力を磨く機会は少なくなっているのかも。)

そこに自分より身体能力が上の相手を出し抜くチャンスがあります。 相手がボールに目を奪われて思考が止まっている間に、次のチャンス(又はピンチ)を見つけ、次のプレーの準備を進めることで、一歩も二歩も先を行くのです。

とはいえ、上手い子たちでもボールウォッチャーになるのですから、これを克服するのは簡単ではないです。みんなと同じことをしていたら克服できません。 それと「次のプレーの準備」とは何か?ですよね。



脱ボールウォッチャーの道

まずは、周りを見ることから。 ボール又はボール近辺のプレーを1秒以上見つめることが無いように、常に「ボール」と「ボール以外」を交互に見るように心がけることからです。

この「ボール以外」は何を見るのか? それはその時々で、注意するポイントが違ってきます。たとえば、
 ・味方ボールか?相手ボールか?
 ・ボールのピッチ上での位置は?
 ・自分のいる位置?
 ・自分のポジション・役割
 ・作戦上点数を取りたいのか?守りたいのか?
等々に応じて違います。

でもそんなことを言っていたら、何を見たらいいのか分からないし、分からないままでは「ボール以外」を見ようとするモチベーションは上がらず、結局ボールウォッチャーに戻ってしまいます。

そこで段階を踏んでステップアップするイメージが大事です。



味方ボールのときに見るもの&次の準備

味方のボール(マイボール)の時は、攻撃ボールキープ、あるいはそのサポートが仕事です。
(ただしディフェンダーは、味方ボールのときでも、相手の攻撃に備えたポジショニングも考える必要があります。たとえば、センターバックが上がった場合に、サイド等がそのカバーリングのためにポジションをスライドしてくるなどの動きがあります。)

・・ありがちなNG行動・・
ボールとその周辺しか視野になく、なんとなくだんだんボールに近寄っていき、味方からボールをもらっても、次のプレーを考えてないから、とりあえず足元にボールを止めて、周りを見てから次のプレーを考える。

・・その結果・・
相手のプレッシャーが早いとあっという間にボールが奪われます。かろうじてかわしても、どんどんプレーが苦しくなっていきます。ムダに時間をかけることで、次のプレーを準備していた味方にもマークがついてしまい、味方の動きをもムダにしかねないです。1タッチ多いだけで、ナイスプレーのチャンスが消えてしまうことは、よくあります。

・・ではどうするか?・・
【1】味方ボールのとき
(思考・行動)「ボールのもらい方」と「次のプレー(シュート・クロス・パス・ドリブル・キープ)」を同時に考えて動く。マークを上手に外せないとき・オトリになる時でも、もし今ボールが来たらの「次のプレー(パス・ドリブル・キープ・クリア・相手へのチャレンジ)」は考えておく。
(視線)「ボールホルダー」と「周囲」を交互に見る。
【2】自分以外の味方にパスが出た瞬間
(思考・行動)「次のボールホルダーからのボールのもらい方」と「次のプレー」を考えて動く。
(視線)「ボール」と「周囲」を交互に見る。
【3】自分にパスが来た瞬間
(思考・行動)カットされないよう必要に応じてボールに近づいて受ける。考えておいたプレーの実行・修正・変更の判断。変更の場合は次のプレーを考えて行動する。
【4】味方のボールが相手にとられそう・とられた
(思考・行動)「チャレンジ・カバー・マークの判断と即実行」
(→次節「相手ボールのときに見るもの&次の準備」へ)

・・「ボールのもらい方」を考えるとき見るもの・・
(1)ボールホルダーがパスを出せる方向とタイミング
(2)インターセプトしそうな相手との位置関係(ボールにもっと近づいて受ける必要性の確認)
(3)パスを中継してくれそうな味方との位置関係

・・「次のプレー」を考えるとき見るもの・・
(a1)シュートコースの有無
(b1)クロスやパスが出せる味方・スペース
(b2)クロスやパスに反応しそうな相手の位置関係
(b3)ワン・ツーでもらえそうなスペースと壁役の味方
(c1)ドリブルの目的地とコース・ドリブル後のプレー(シュート・クロス・パス)のイメージ
(c2)ドリブルに反応しそうな相手の位置関係
(d1)キープして時間調整・誘き出しできる場所・キープ後のプレー(シュート・クロス・ドリブル・パス・クリア)のイメージ
(d2)キープ時に競うであろう相手の位置関係

(説明の言い方を変えてみる)
コーチ 「この前テレビで、腕のいい泥棒が一番重視することは何かを説明しててね。それがサッカー選手にも通じると思ったんだけど・・見た?」
子供達 「見てない。」

コーチ 「じゃ、腕のいい泥棒が何を一番重視すると思う?」
子供達「泥棒じゃないから分かんない!」

コーチ 「答えは・・・あらかじめ逃げ道を確認すること。なんだって。」
子供達 「どうサッカーと関係あるの?」

コーチ 「つまりサッカーでも、ボールを受けたときに相手にとられないように、ボールをもらう前からあらかじめパスコースなり・運ぶスペースなりを確認しておくことが大事でしょ。これって同じじゃない?」
子供達 「ふ~ん。」

コーチ 「ボールをもらってから次のプレーを考えてるようじゃ、あらかじめ逃げ道を確認しない泥棒と同じく、捕まりやすいってことかな。」
子供達のうち、何人かは「なるほど」な顔をしました。

(説明の言い方を変えてみる)
ノープランのままボールを受けることがないように、味方ボールのときは「今、ボールがきたら、どうするか?」と次のプレーの候補をプレー中は常にイメージすることが大事。 サッカーは足でするスポーツだけど、頭の回転の速さがすごく大事。



相手ボールのときに見るもの&次の準備

相手ボールの時は、守備ボール奪取が仕事です。
(ただしフォワードの一部は、状況に応じて相手ボールの時でも、味方がボールを奪った時のカウンターのターゲットとして準備する役割の場合もあります。)

・・ありがちなNG行動・・
相手ボールに変っても、戻らず&守備に加わらず、味方がボールを取ってパスしてくれることを祈って、高い位置に留まる。
ボールが取られて、できなかったプレーを残念がり、気持ちの切り替えができない。

・・その結果・・
相手の攻撃が進み、気づいたときには手遅れとなり、もう手の届かないところで、ただ相手のシュートやゴールを眺めるだけの存在になってしまいます。
必要なタイミングで攻守の切り替えができず、戻りの一歩が一瞬出遅れると、プレーではもう「蚊帳の外」です。

・・ではどうするか?・・
味方のボールが相手にとられそう・とられたとき。相手がパスして別の相手プレーヤーにパスが通りそうなとき。
(思考・行動)<b>チャレンジ・カバー・マークを判断し、即実行します。守備は出だしが重要です。ボールに近い人から、チャレンジャー、カバー、マークの役割分担です。
(視線)ボール周辺と、味方ゴール前までにかけての相手・味方・スペースの確認。

・・チャレンジの場合・・
(思考・行動)まずはボールホルダーに寄せる。シュートできる位置の場合、シュートコースも塞ぐ。抜かれるのが一番被害大なので、ディフェンスは粘り強く。時間をかけて味方が戻る時間を稼ぐことも大事なプレー。短気を起こして相手のコントロールにあるをボールを一発で取りにいかない。まずはボールより相手を止める。又はゴールに近づく方向に進めない。体を寄せて相手の自由を奪う。外側・後には行かせてもOKだが、内側・前にはボールを進めさせない。横や後にパスを出されるのはやむなしだが、ゴール前へのパスやシュートはさせない。またパス後に内・前に入ってくるならマークを簡単に外さない。無理にボールを取りに行くと、抜かれるリスクが高まる。ボールを取りに行く瞬間は限られている(ボールが相手にわたる直前/相手がプレッシャーでボールコントロールを失ったとき/相手がターンを焦ったとき等)。もし抜かれてもプレッシャーをやめないか、次のカバー又はマークに回る。
(視線)チャレンジする相手がメインで、目に入る範囲で味方や相手プレーヤーもチェック。自分の後ろでカバーしている味方の気配も感じれるとベター。

・・カバーの場合・・
(思考・行動)チャレンジャーが抜かれたときに備えるのはモチロンですが、相手が出すパスに対応するためにパスコースも意識するとともに、コントロールを失ってこぼれてくるルーズボールにも対応できるように備える。チャレンジャーの味方が抜かれる瞬間は、ボールが相手プレーヤーから離れてカットできることも多いので、そのタイミングを見逃さない。ボールをカットできなくても、次のチャレンジャーとしてしっかり相手を止められる位置に体を寄せる。相手のパスで、ボールホルダーが変わった時は、改めてチャレンジ・カバー・マークの判断と行動です。
(視線)ボールとチャレンジの動向を見ながら、攻め入ってくる相手や、危険なスペースがないかを確認するため、周りを見ることも忘れられないです。

・・マークの場合・・
(思考・行動)最も得点につながりやすい、ゴール前のスペース相手からマークする。ゴール前にディフェンスが1人余るくらいで、相手をマークできれば、簡単に相手もパスできないので、相手の攻撃の選択肢を狭めて苦しめることができます。マークの時の位置取りは、「マークする相手とゴールの間の位置」で尚且つ「ボールとマークする相手をムリなく見れる位置」です。できるだけ首を振らなくてもボールと相手を視野に入れられる位置取りで、見落としのリスクが減らせます。ただし、ボールの高さより下がる場合は、オフサイドが取れるかもしれないことも念頭に、位置取りすることが大事です。
(視線)ボール周辺と、味方ゴール前までにかけての相手・味方・スペースの確認。さらにオフサイドラインと、逆サイドの相手・味方の確認。

(説明の言い方を変えてみる)
守備は出だしが肝心です。相手ボールになると同時に、守備に気持ちを切り替え、ボールと自分の位置関係に応じて、「チャレンジャーか、カバーか、マークか」を判断し、それと同時に必要な位置に移動します。多くの場合ダッシュです。
味方が連携して、スペースやパスコースを潰したり、先手が打てれば、相手の選択肢も限定され、相手の焦りやミスの誘発にもつながり、早めに相手の攻撃を潰すことができ、体力の消耗を最小限にできます。だらだら守備に入るほうが、結果的に「リスク」も「体力消耗」も大きくなります。



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