時系列の指導の落とし穴

あるディフェンダーの子に、コーチが「ゴール前のスペースに入って!」とベンチから叫びました。その子は聞こえたはずなのに、相手選手が味方ディフェンスのマークを受けながらドリブルするボールに、ただ遠巻きに付いていくだけでした。その直後にゴール前にクロスをあげられて、別の選手にシュートを打たれるまで、その子はディフェンスに関わることができなかったのでした。

その子は、コーチが言った「ゴール前のスペースに入る」という動きの意味が分からなかったため、行動を起こすことができなかったのでした。

その子が適切なタイミングで「ゴール前のスペースに入る」ことができるためには、その次にするであろう「ゴール前を守る」というプレーの理解が欠かせないです。

先に「ゴール前を守る」というプレーを身に付けていたら、別の場所にいても適切なタイミングで「ゴール前のスペースに入る」ことができるようになります。

もしコーチが叫んだときに「ゴール前を守る」というプレーをその子が理解していたら、すぐにもゴール前に駆けつけて、相手のクロスからのシュートを邪魔することができたはずです。

プレーには、「次に××されないように、今○○する」「次に△△できるように、今□□する」という、次を想定し、そのための準備の動きも多いです。 ××のイメージなしに、○○はできないです。また△△を理解していないのに、□□できないです。 ○○や□□だけをアドバイスしても、それに続くプレーが分からなくては頭に入りっこないです。



優先度の高いプレーから範囲を広げる指導

優先度の高いプレーを先に覚えてから、そのプレーにつながるプレーの範囲を広げていくという順序での指導が、ムリなく子供たちに理解されやすいと思います。

守備面では、ゴール前でのディフェンスが最優先だと思います。 ゴール前で自由にプレーされるのが一番危険ですし、そこでのディフェンスを知ることが、ゴール前に持ち込まれないためのプレーの発想にも役立ちます。

チームが弱いほど、自陣ゴール前でのプレーの頻度も自然と多くなります。その場合は尚更、ゴール前でのディフェンスやプレーを練習することが合理的です。試合での重要性や頻度の低いプレーに力をいれている場合ではないです。



時系列の指導のほうがいい場合も

一方で攻撃面については、時系列でいいのかなとも思います。

まずは味方どうしでのパスやドリブルを組み合わせてボールを運ぶことができないと何も始まりません。シュート練習にたっぷり時間を使っている練習をときどき見ますが、シュートを打てるところまでボールを運ばないことには、その練習が実を結ぶことはないです。極端な話、シュートは多少下手でも、ゴール前まで運ぶスキルを磨いたほうがチャンスは増やせます。シュート練習はある程度ゴール前に運べるようになってからでも遅くないと思います。
(つまり、「シュート練習」より「パス・ドリブルで運ぶ練習」のほうが優先度が高いです。)



数種類の展開がありえるプレー

たとえば自陣のゴール前で、相手のドリブラーに味方ディフェンスがチャレンジに行き、カバーのポジションにはいりました。 その後のプレーは展開によって複数あります。

(1)味方がドリブラーに抜かれた時
直後はボール奪取のチャンスでもありますが、そのチャンスは一瞬だけ。その直後の一瞬のチャンスを逃したら、ボールではなく人(ドリブラー)に寄せて、シュートとドリブル突破を防ぎます。可能であればボールを奪いたいですが、ボール奪取に夢中になり、かわされて抜かれるのが一番の痛手です。

(2)相手ドリブラーのパス又はシュート
カットするのが一番ですが、相手にボールが渡った場合、自分が味方の中で一番近いときには、チャレンジャーとして、相手に寄せてシュートとドリブル突破を防ぐディフェンスにはいります。別の味方がチャレンジャーとして付いた場合には、カバーのポジションに入ります。

(3)味方がボールを奪取
味方からボールを受けて、次の味方につなぐか、自らドリブルして運びます。ボールを奪った味方の状況によって、カバーの位置でボールをもらうか、あるいは前のスペースに走ってパスをもらうこともあります。

(4)相手も味方もボールをキープできずルーズボールになる
ボールが近い場合は、いち早くキープに動く。キープできない場合も、ボールを追う味方のフォローに走る。又はボールを追う相手選手のディフェンスに備える。

どのプレーもあり得るので、それぞれの可能性に、心と体を準備して、味方ディフェンスのチャレンジを見守ります。

次の展開で複数のケースを想定して動かなければならないというのは、サッカーのプレーではよくあることなので、相手や味方のプレーに出遅れないようにしっかり集中して臨むことが大事です。事前に知らないと対応できないプレーあるので、そういうプレーは経験の差が出るのでした。



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