2人一組のパス練習とは

サッカーの練習風景では、おそらく最もおなじみの練習です。2人一組で、向かい合ってボールのキックとトラップを繰り返す練習です。

ルールもシンプルで、おなじみなだけあって、特に説明はしなくても練習を始められる手軽さはあります。

どの練習にも共通しますが低学年の場合は特に、子供たちに練習方法を説明してスタートさせるだけで大変だったりします。
この練習では、2人一組を決めて、それぞれのポジションに立たせて、パス練習をスタートするだけですが、子供たちの人数が多いとそれだけでも一苦労だったりします。
マーカーなどで立ち位置まで決めてあげないと、思い思いの位置でバラバラにパス練習をしたり、もしくはコーチの隙をついて練習とは別の何かをしていたりします。
何度言っても聞かない子も少なくないところが、苦労するところなのでした。イライラしないで対応できるように、気持ちに余裕は忘れられないです。
子供たちが小さいほど、ルールのシンプルさや、楽しさ要素の存在が重要です。
この練習はルールはシンプルではあるけれど、楽しさの要素は低いので、褒めたり励ましたりとマメに声掛けしてあげないとダラダラになってしまうのでした。



まずは近い距離でインサイドキックとトラップ

まずは近い距離で、最も使う機会の多いインサイドキックの練習からです。

小さい子たちはトゥキックが多いです。体に対してボールが大きいからか、つま先で蹴るトウキックがやりやすいようです。またトウキックだと思いっきり足を振れることで、気持ち良くボールが蹴れるからでしょう。
少し大きい子だと、インステップやインフロントのシュート性のキックを蹴りたがります。やはり思いっきり足が振れるのが気持ちいいのでしょう。

足を思いっきり振りたい子供たちにとって、インサイドキックは少し退屈なキックかもしれないです。でもしっかり蹴れば、スピードのある気持ちのいいボールが出せますし、そのことを体験できれば、モチベーションも上がってくるでしょう。



インサイドキックのポイント

インサイドキックは、足の内側の側面で蹴るキックです。キックの中でも最もコントロールしやすいキックで、試合でも一番使われるキックです。インサイドキックは、グラウンダースピードのあるのが良いとされます。

・・ボールのミート箇所・・
足の内側の側面といっても、ボールがミートする場所が、親指に近いのか、踵に近いのかでキックも違ってきます。どの部分を使うのが力が入り、コントロールしやすいかは個人差もあるので一概には言えないですが、小さい子の場合、くるぶしの辺りに当てるのがいいと思います。
その理由は、ボールがミートする際に、足首がぐらぐらしてると、ボールに力が伝わらないですし、コントロールも安定しません。親指に近づくほど、足首を固定するのに力が要りますが、くるぶしの位置なら、固定するのにそれほど力が要らないはずです。

・・軸足の踏み込みから集中・・
キックの際は、蹴り足に集中しがちですが、それだけではキックの精度もパワーも上がりません。
軸足を踏み込んだ段階で、そのキックの成否は8割方決まってしまいます。体の位置・向きも決まる軸足の踏み込みに集中することが大事です。適切な位置・向きに軸足が踏み込めれば、あとはしっかりミートさせるだけ。でも軸足の位置・向きが悪ければ、蹴り足だけで修正は困難です。
軸足の位置については自分にあったポイントを見つける必要があります。例えば、ボールに対して軸足が前すぎると、ボールの上を叩いてだふることになりますし、後ろすぎるとボールが浮いてきます。 軸足がボールに近すぎても遠すぎても動きが崩れて、キックに力が入らなかったり、ボールコントロールが安定しないです。
軸足を強く踏み込むことも、強いパスを出すためには欠かせないです。踏み込みが強ければ、蹴り足の振りがコンパクトでも強いパスが出るはずです。

蹴る瞬間だけ集中しても、いいキックはできないです。むしろ大事なのは軸足を踏み出す瞬間です。蹴り足がミートする瞬間は、普通はボールに意識を置くよりむしろ、ボールが飛んでいく先を見ていることも多いはずですね。

・・スイングはコンパクトに・・
インサイドキックは、キックまでのモーションのスピードも重要です。蹴り足のスイングがコンパクトなら、蹴り出すまでに時間をかけずにパスが出せます。
実は大振りしなくても強いパスは出せます。軸足の踏み込みを強くすることで、十分強いキックを蹴ることができます。膝下の速い振り抜きで蹴り出す感じです。

・・ボールを強く蹴ること・・
弱いパスは途中でカットされます。選手が走って追いつくような緩いパスでは、ゲームで使い物にならないです。インサイドキックも強く蹴ることが大事です。
強いキックには、軸足を適切な位置に・強く踏み込むことが欠かせませんが、大振りは不要です。ミート時にしっかり足首を固定することも大事です。

・・蹴ったボールが浮く・・
強く蹴ったときにボールが浮くようであれば、軸足をもう少し前に踏み込む必要があります。ボールに対して軸足が後ろすぎると、ボールをミートする足の側面が上を向いてしまい、強く蹴るとボールが浮く原因になります。逆に体が前すぎると、ダフッってボールの上を叩く感じになります。
ところで弱いキックだと、軸足の位置が悪くてもボールが浮かないので、問題点が見えなくなってしまいます。パス練習のキックは強く蹴ることが基本です。

・・蹴ったボールが左右にそれる・・
ボールが左右にそれるときその原因は、「体の向き」「軸足の向き」「軸足とボールの離れ」「蹴り足の足首の固定・ミートした場所と向き」などが考えられます。自分がコントロールしやすいフォームや軸足・蹴り足の位置を何度も蹴って見つけることも大事です。
キックのフォームが安定しないうちは、日によっていい位置が変わるこもありえます。自分にあったフォームを見つけ、安定させるためにも試したり・繰り返したりの練習は大事です。

・・コントロールの精度をアップ・・
インサイドキックは強さとコントロールが重要です。「受け手が取れればいいや」ではなく、受け手の「どちらの足にトラップさせるか」また「足元か、何歩先の位置か」まで狙って出せるようになりたいです。



トラップのポイント

・・棒立ちをやめる・・
パス練習中、棒立ちでボールが来るのを待っている姿を見かけますが、これではなかなか上達しません。 ボールがどちらにそれても対応できるように、前後左右にすぐ動ける体勢で準備して待つことが大事です。

・・足だけトラップをやめる・・
ボールをトラップするとき、届くからといって足だけを伸ばしてトラップしているようでは、いいプレーはできません。しっかり体をボールの軌道上に移動して、余裕のある体勢で受けることが、次のプレーを速やかに行うために必要です。

野球の捕球でも、速やかに送球に移れるように、手だけで取りに行くのではなく、しっかり移動して余裕のある体勢でボールをキャッチすることが基本です。球技には共通の基本なのかもしれないです。

・・トラップからキックまでを速く・・
ボールをトラップして、相手に蹴り出すまでを最小限の動き最大のスピードでスムーズにできることが大事です。トラップでモタモタしていたら、相手の恰好のカモです。手数をかけずに2タッチで、しかも動きも素早くパスを出すことをイメージして練習することが大事です。

・・ボールが来てからでは遅い・・
ボールが近づいてきてから集中するようでは遅すぎます。実際の試合なら、相手チームのプレーヤーに出遅れてしまいます。
パスの出し手が蹴り出すところから集中し、体の準備を始めることが大事です。パスが弱いときには、ボールを迎えに行く意識を持つことも大事です。
試合中に目の前でパスをよくインターセプトされる選手は、パスが弱くても待っているのが癖になっていることが多いです。

・・一歩前で受けることを心がける・・
パスを少しでも早く受けるために、スピードを伴って向かってくるボールでさえ、「一歩でも近づいて受ける!」ことを常に心がけると、以前なら見逃していた「ボールの出どころ」にまで自然と集中力を前倒しできるようになります。気持ちのスイッチを早めると自然とプレーも良くなります。
スピードあるボールを、さらに前に出て受けることは、トラップ技術の向上も期待できて、一石二鳥です。



ダイレクトでのインサイドキック

トラップからのインサイドキックができるようになったら、次は自分に向かってくるボールをダイレクトでインサイドキックして返す練習です。

トラップを挟むキックの場合よりも、ボールが到着するまでの準備が多いです。そのため、その分動き出しを早く、また動きも速く、さらに正確さも求められます。難しくなる一方で、チャンスを広げるより称賛に値するパスが可能になります。

ダイレクトキックの時の準備は、トラップのときの準備に加えて、「蹴り出す方向に合わせた体の向き・軸足の位置と向き」をしっかり準備し、さらに「蹴り足のテイクバック」も、ボール到着前に完了していないといけないです。準備ができていれば、あとはボールの到着のタイミングに合わせて、蹴り足をスイングしてボールをミートするだけです。

ピッチの状況によってボールがイレギュラーしても、ある程度なら対応できるように、準備を素早く行うことと、ボールをしっかり蹴り出すまで集中力を切らさないことが大事です。プレーはしっかり最後までやりきることです。

キックの強さ・コントロールが思い通りにいかないときは、どこかに不足・問題があり、修正を要すということです。
来たボールをほぼ同じ方向に返す単純なパスですし、試合の時のような相手プレーヤーのプレッシャーもないですし、10本練習したら10本とも納得のキックができる(成功率100%)ことを目指すべきでしょうね。



この練習で上達できるもの/上達できないもの

この練習で上達できるのは、
 ・ 正面からきたボールのトラップ
 ・ 正面へのインサイドキック
です。

この練習では、ボールを受けた方向とは違う方向に出したりという体の向きを変える動きや、走りながらの受け渡しの動きなど、実際の試合でよく使われる動きは含まれておらず、最もシンプルなトラップとキックの練習だけです。相手選手のプレッシャーという要素もないです。

より実践に向けて他の動き(体の向き/走りながら等)も組み合わせて練習するには違うメニューも必要です。

【関連のテーマ】
4人一組方向を変えるパス練習



組合わせて練習したいこと

・・周りを見る動作・・
実際の試合での実用性を考えれば、トラップやパスの合間には、周りを見るという動作を入れたいです。
周りを見ることは、サッカーでは常に必要なことなので、特に意識しなくても自然と周りに目が行くようになるのが目標です。
できるだけボールから目を離せるように、いろんなタイミングで目を離すチャレンジをしてみるといいかも。最初は無理だと思っていたプレーのスキマでも周りを見れるタイミングが見つかったりします。

周りを見ろという意図で、「首を振れ」と指示するコーチもいます。首や体が動かないことには、しっかり周囲を見ることができないですからね。
でも「首を振れ」と言われたから「とりあえず首を動かしていることをコーチにアピール」するだけでは意味がないです。
ちゃんと何かを見ることが大事です。できるだけ興味が持てて、具体的なものを見るのがいいと思います。例えば周りで練習している仲間たちのキックやプレーのあら探しをしてみたりするのもいいかも。



意識の持ち方でずっと楽しく充実できる

ただなんとなく惰性のままに、お互い向き合って交互にキック・トラップを繰り返すだけでは時間の無駄です。

1回1回を真剣に、試合の中の失敗できないプレーだと思って取り組むことが大事です。

1回1回前より進歩できるように、挑戦する気持ちも大事です。
例えば、トラップなら少しでも前で正確に受けるとか、キックなら少しでも強く正確に蹴るとか、トラップからキックまでの動きを少しでも速くするとか。さらに最善の動きを目指しながらも、その間に周りを見て仲間のダメなプレーを一つでも多く見つけるとか。

仲間と同じメニューの練習をしても、一回一回にかける真剣さや、気持ちの持ち方によって、より充実した練習にできます。練習にかける日々の思いの差は、積み重ねられることで成長の差へと形を変えます。後悔しないためにも今をしっかりですね。

もしその時持っている自分のめいいっぱいの能力を思う存分引き出すことができたら、実はその瞬間はすごく楽しく・幸せな瞬間となります。
例えば、「自転車の補助輪を外すのに成功した直後の気分」とか、「できなかった逆上がりができるようになったときの気分」とか、「スキーやスノボでちょっと難しいかなと思ったコースを滑り降りることができたときの気分」とか、等がその思いに近いと思います。
めいいっぱいの自分の能力を引き出すには、できることを繰り返すだけではなく、その上に少し挑戦も加えることが大事です。



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