相手からボールを奪うのが上手く、ピンチのときには攻めあがっていてもディフェンスの深くまで守備に戻ったり、味方の縦パスにも反応して得点も上げたり、Bチームにいると目立って活躍するのに、なぜかAチームにいると存在感が薄く、ミスも目立つ選手がいました。
足も速く、キック力も体力もあり、気持ちも強いので、目立つ活躍を期待されて試合に出るのですが、チームに噛み合えずに空回りです。
活躍できない理由は一つ。味方との連携です。
Bチームにいるときは、その選手が自分のタイミング・考えで動いても、他の選手がその動きに合わせてくれたので、それなりに機能したのですが、Aチームの場合は違います。
味方の動きに合わせてタイミングよく連動することも必要なのに、その選手はこの「連動」が苦手でした。
ではどうして連動(連携)できないのでしょうか?
他の選手並みに、プレー中は周りを見ているようでしたし、連動できないことが不思議でした。
実際、相手からボールを奪ったり、パスカットするときは、絶妙なタイミングで動きますし、よく見てなければできないプレーです。
それで本人にいろいろ話を聞いてみました。
話すことに関してはチーム一といえるほど、おしゃべりな子ですし、負けず嫌いでもあるので、とめどなく「言い訳」が溢れてきたのでした。
いろいろ話していくうちに、「味方ボールのときに、自分がどこに行けばいいのか分からない」ということが原因のようでした。
おしゃべり上手は「左脳」発達の表れなのか、逆に「右脳」の空間認識能力は、得意じゃないのかな?と感じたのでした。
分からないプレーは、見て・試して・身につけることです。
ゲーム中のプレーの判断は一瞬です。一々考えて思い出してる時間なんてありません。遅れればチャンスを逃します。だから体で覚え、体が反応することが大事です。
見本となるプレーを繰り返し見て、そして自分でもそのプレーを何度も試してみることが大事です。
「知っている程度」では、瞬時に体は反応しません。とにかく繰り返すことが大事です。
そうして繰り返すうちに、空間認識能力も強化されていき、徐々にプレーを身につけるスピードも上がっていくはずです。
その子に、「手本になるプレーを、テレビ・大会や試合のビデオ等から見つけて、それを繰り返し見て、ゲーム練習のときにいろいろ試してみよう」とアドバイスしました。(プレーは苦労して発明しなくても、いいプレーをマネするのが手っ取り早いです。)
でもアドバイスを実際にできる子は、意外と少ないです。聞いたときはその気になっても、一晩もすれば忘れます。その子はサッカーを見るのがあまり好きじゃなかったようで、「手本になるプレー」を見つけようとする取り組みさえしてないようですし、何か月たっても状況は変わりませんでした。
「子供任せにしないで、コーチがパスの連携のパターンを具体的に幾つか教えて練習させれば?」と思うかもしれませんが、選手の動きを逐一決めて繰り返す練習って、子供たちにとってもおもしろくないですし、集中力も持ちません。中途半端なだらだら練習になりやすいです。そして時間をかけて、ようやく動きだけ覚えても、タイミングやスピードが伴わなければゲームではその連携は成功しません。
それなら、最初からゲーム練習で、動き・タイミングをどんどん試して作り上げていくプロセスのほうが、楽しいですし、集中力も上がります。このプロセスで連携を覚えた子はたくさんいます。最初は偶然っぽく連携プレーが決まります。でもそのプレーも次に狙ってできるなら、それはもはや「偶然」ではなく「実力」ですよね。
コーチにも、選手にも、皆等しく時間は限られています。
形だけの練習ではなく、自分に足りないものを認識し、その克服には何をすべきか、そして練習にあたりその意図やシーンをイメージして、試合と同じぐらいの集中力をもって練習できる子は、他の子に比べて濃い練習をしています。 その積み重ねが、実力の差となるんですね。
なんとなくする練習、言い訳ばっかりで集中力が上がらない練習では、なかなか上手くはなりません。
スピード、パワー、スタミナ、負けん気は強くても、それを活かすための練習に真剣に取り組めなければ、さらなる向上は難しいと思うのでした。とはいえ怒鳴って無理強いするようなものでもないですし、今後も繰り返しアドバイスするだけです。
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